第34回日本放線菌学会大会(北海道大学)で修士2年生の岩渕君がポスター賞を受賞
本学科の山村准教授(応用微生物学)は、早川正幸副学長・理事(応用微生物学)と共に創薬資源として活用されている放線菌を自然界から選択に分離する技術を開発してきました。今回、修士2年生の岩渕智宏さんが第34回日本放線菌学会大会(北海道大学)で従来とは異なる新しい原理を用いた運動性放線菌の選択分離法についてポスター発表を行いました。このポスターは、学生・ポスドクを対象とした一般投票によりポスター賞に選ばれました。
授賞対象となった研究題目は「新規運動性放線菌の選択的分離を可能にするバルク土壌浸漬法の開発」になります。放線菌は本学出身のノーベル賞受賞者・大村智博士がエバーメクチンを発見した微生物の一種であり、創薬資源としても重要な微生物です。運動性放線菌は遊走子というべん毛をもつ胞子を持ち、栄養源に向かって泳ぐという特徴(走化性)を持っています。
私たちの研究室では、これまでに運動性放線菌を環境中から選択的に分離する方法を開発してきました(1,2,3)。しかしながら、少量の試料(約1グラム)しか扱えない、熟練した技術や特殊な器材を必要とするなどの課題もありました。
今回の岩渕君の発表では「ろ紙」という一般的な実験器材を用いることで従来の300倍の試料量から運動性放線菌を選択的に分離することを可能にしました。また、この方法は簡便な方法であるにも関わらず、新種と考えられる運動性放線菌の分離にも成功しています。
1. 毛細管捕集法
Hayakawa, M., Tamura, T., & Nonomura, H. (1991). Selective isolation of Actinoplanes and Dactylosporangium from soil by using γ-collidine as the chemoattractant. Journal of fermentation and bioengineering, 72(6), 426-432.
2. 花粉捕集-シリカゲル乾燥法
Hayakawa, M., Tamura, T., Iino, H., & Nonomura, H. (1991). Pollen-baiting and drying method for the highly selective isolation of Actinoplanes spp. from soil. Journal of Fermentation and Bioengineering, 72(6), 433-438.
3. 再水和ー遠心沈殿法
Hayakawa, M., Otoguro, M., Takeuchi, T., Yamazaki, T., & Iimura, Y. (2000). Application of a method incorporating differential centrifugation for selective isolation of motile actinomycetes in soil and plant litter. Antonie van Leeuwenhoek, 78(2), 171-185.